中小企業診断士の内山です。起業家や経営者の皆さんが訪れる「相談窓口」。みなさんどんな悩みを抱えているのでしょうか?
このコラムでは、中小企業診断士に寄せられる「よくあるお悩み」を相談トップ10として、10位から順番にご紹介しながら、一般的な対応方法についてもご紹介しています。
第6位は…「補助金を活用したい」です!
「隣のA社は補助金を活用して新しい機械を購入したらしい」
「取引先のB社は補助金を活用して新しい事業を始めたらしい」
「うちの会社も何か使える補助金はないかな?」
上手に活用している経営者がいる一方で、「こんなはずじゃなかった」という事態も起きています。今回のコラムでは、どの補助金でも共通する活用のポイントや、よくある誤解についても紹介したいと思います。
知っていますか?補助金・助成金・給付金の違い
使い道に応じて、行政や団体等から資金補助を受ける「補助金」。似たような言葉で、助成金や給付金がありますが、それぞれの違いは意外と理解されていないかもしれません。特徴を表に示してみましたので、ぜひ以下をご参照ください。
補助金が、他の支援金と最も異なる点は「採択される必要がある」という点です。よく経営者のみなさんからも「久しぶりに受験生のような気分を味わった」と聞きますが、発表されるまでドキドキしながら待たなくてはいけません。
また採択発表があるということは「スケジュールが読めない、読みにくい」という点も注意点が必要です。いつ採択結果が発表になるか、もっと言えばいつ公募が開始になるかがが読みにくいので、自社の資金繰りで振り回されてしまう方も数多くいらっしゃいます。
注意点は大きく2つ!「入金まで時間がかかる」「交付決定前に購入してはいけない」
では、次にフロー図を見ながら補助金の注意点についてお伝えします。
下図は、経済産業省が扱っている一般的な補助金の一つ「ものづくり補助金」の申請~補助金支払いまでの流れを示したものです。
④番~⑨番までを注目してもらえればわかりますが、採択(補助金交付候補者決定)されてからも交付申請・交付決定、補助事業実施、実績報告、確定検査というステップを経て事務局からOKをもらわないと口座にお金が振り込まれません。
その間は自己資金か金融機関から借りるなどして立て替える必要がありますし、事務局と書類不備に関する対応なども頻繁に行われるため、口座にお金が振り込まれるまでに半年~1年近くかかることも多々あります。
また採択されても⑤交付申請・交付決定になる前に補助対象設備を購入(契約)していると認めてもらえないという点も、一般的な感覚からはズレるところのようです。かなり計画的に進める必要があります。
綿密に計画し、確実に交付決定をゲット。そして正しく活用しよう。
さて、これだけ書いてしまうと補助金を申請するモチベーションが下がってしまうと思いますが、上手に活用している事業者は次のポイントを押さえています。
1. 補助金の趣旨と実施する事業の趣旨が一致しているものを使う
言い換えると「補助金は手段であり、補助金に合わせて事業を組み立てていない」ということです。もともと原型となる事業構想があり、調べてみたら使える補助金があったので使う…という流れで進んだ事業者さんは上手に活用できていることが多く、反対に無理やりストーリーを合わせると、後日トラブルになっているケースを多く耳にします。
2. 補助金がなくても実行できるだけの計画性を持っておく
「たとえ補助金がもらえなくても、この事業(設備投資)は実行する必要があるんだ!」という心づもりで事業計画を作成し、資金計画も立てて、関係機関との調整やリスクの研究を済ませているレベルになってはじめて、有効に活用できるような水準に達せられるようです。反対に、勢いで採択を受けてしまうと、思っていたように機械が動かない、需要が思ったよりもなかった等、かえって不幸な状態になっているケースを多く耳にします。
3. きちんと計画的に使う準備をする
前述したとおり、補助金の公募開始のタイミングが不明確だったり、補助金が口座に入金されるまで立て替える期間が長期化するケースも多くあることから、補助金を使うにしても、資金繰りなどにはあらかじめ余裕をもって準備を進めておく必要があります。
いかがでしたでしょうか?一言で言うと「かなり計画的に準備&活用する必要がある」ということです。あまり勢いや思いつきで使ってしまうと、いいことがないのが補助金かなと思います。
次回のテーマは「お金を返すのが厳しくなりそう」です。コロナ資金の返済をはじめ、厳しい&難しい相談が増えています。基本的には回避したい内容ですが、万が一そんな状態になったらどう対応すればよいかについて説明します。