「相談窓口 よくあるお悩み相談トップ10」#1 売上を回収したい!

中小企業診断士の内山です。起業家や経営者の皆さんが訪れる「相談窓口」。みなさんどんな悩みを抱えているのでしょうか?

このコラムでは「よくあるお悩み相談トップ10」として、10位から順番にご紹介しながら、一般的な対応方法についてもご紹介します。

第10位は…「売上の回収」です!

売上が回収できないってどういうこと?

正確には「売掛金」と呼ばれるものですが、商売をしていると「納品後〇日以内に支払い」というように、商品・サービスの提供とお金の支払いのタイミングがずれるという場面が数多くあります。たとえば工事代金、ホームページ制作、月謝制のスクールのほか、相手方が事業者だと多くのケースで「月末締翌月末払」といった形での取引が多くなります。

 ここで問題になるのが「期日を過ぎたのにお金が支払われない」「『もうちょっと先延ばしにして』と言われたが、いつまでたっても支払いがない」というケースで、これが今回のお悩み「売上が回収できない」という悩みが生じる原因です。

飲食店や美容室など「サービス提供と支払いがほぼ同時」という商売の場合は特に問題になりませんが、実はこうしたビジネスモデルの方が少数派。たとえば、自動車整備を行なったあとにかかった金額を請求し支払ってもらう、など、サービス提供と支払いにタイムラグがある事業の方が多いのではないでしょうか。

地方で商売をしている身としては、「あまり厳しく催促して相手との関係をこじらせたくない」という意見も多く聞きます。

どうすればよいのでしょうか?

対応策:きちんと書面で伝える、記録を残す

 このような場合、相手方と連絡が取れるようであれば、「とにかく支払い期日を明記した『書面」を取り交わしましょう』とアドバイスしています。相手方に連絡が取れないようであれば、「支払いのお願い(催告書)」といった形で、文書で通知を発送ないし郵便受けに入れておくのが良いでしょう。

実のところ、売上か回収できないと相談に来られる経営者の大半は「口約束」で商売しているため証拠が全く残っていません。催促も電話などの口頭での伝達ばかりで書面に残っていないほか、「〇月〇日の何時に、誰に電話して、どんな話をして、どんな回答があったか」という記録も残っていません。

書面を交わしたり、文書で通知したりすれば、肌感覚ですが相談窓口に来られる方の6~7割くらいの方は売掛金を回収できています。これまで述べた書面を交わす、文書で通知する、記録を残すという方法は、より厳しい方法で回収を進める場合にも必要になります。

回収不能は商売にとって大ダメージ

売上の回収不能は、単に売上が入らなかったと考えがちですが、実は「利益」が丸ごと飛んで行ってしまったのと同じ影響があります。

 たとえば工事代金50万円、材料代や人件費などの経費が40万円、利益10万円の工事代金が回収できなかった場合を考えてみてください。50万円が入金にならないということは、「同じ工事5件分の利益」が消えてなくなってしまったことを意味します。工事5件を受ける労力や手間を考えると、ゾッとしますよね。

 回収作業をしているくらいなら本業のこと、目の前のお客さんのことを考えたいもの。このような状況を作らないためにも、簡単でも良いので、最初から「契約書」を交わすのが吉です。とくに最初に述べたような「商品・サービスの提供とお金の支払いのタイミングがずれる」商売の場合は、契約書を結ぶようにすることをお勧めします。検索サイトで「○○業 契約書 ひな型」といったワードで検索すると、業界団体や士業の方、場合によっては官公庁が示しているひな型が出てきますので、それらをベースにすれば意外と手間もかからずに作成できます。

いかがでしたでしょうか?次回は第9位「新商品を開発したい」です。今回のコラムより前向きな内容になるでしょう。それではまた次回。