※「商工連ながの8月号」に掲載していただいた内容です
「『だれに、なにを、どのように』なんて、そんな基本的なことはワンポイントアドバイスされなくてもいい!」と怒られてしまいそうですが、あえてこのタイトルにさせていただきました。そのくらい最近この「基本的なこと」が大切であり、意外と深いと思える機会が数多くあるためです。
言わずと知れた「だれに、なにを、どのように」は、いわゆるマーケティングの根幹になるポイントを説明した言葉です。事業を進めるうえではもちろん、事業計画書の作成や補助金申請でも記載を求められることがあるため、意識している経営者や支援機関の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?経済産業省が発表している「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」においても、重要な着眼点として取り上げられています。
しかし日々の経営相談や支援の場で話をしていると「表面的な意味」でしか受け取られていないと感じることが多々あります。たとえば先日ご支援したお蕎麦屋さんのケース。ご主人は「だれに、なにを、どのように」というポイントは知っていたのですが「そりゃぁ内山さん、うちは蕎麦屋だから、美味しいそばを・観光客と地元の人に・店に来てもらって提供しているのよ」で話が完結してしまいました。間違いではありませんが、本当にそうでしょうか?観光客や地元の人はなぜこの店を選んだのか。場所がよかったから?美味いと評判だったから?美味い蕎麦ならなぜ美味いのか?店からの景観は関係ないだろうか?実は提供方法に特徴があるのか?リピーターになっている方はなぜリピートしているのか?…といった具合に、深く考えていくと、単純に蕎麦という食べ物だけを売っている訳ではないことに気づけると思います。
「だれに、なにを、どのように」を考える際の着眼点を私なりにまとめてみたのが下の図です。表面的な意味だけで考えると単なる事実確認になってしまって、なぜ好調なのか、なぜ不調なのかといった大切なポイントに辿り着けません。一歩進んで「潜在的な意味」まで深堀してみると、正確な現状分析や「本当の意味で事業者さんが提供している価値」の発見につなげることができます。そうした価値を見つけ出して言語化し、経営者の思いや外部環境と掛け合わせてこそ、事業計画を考えるときに必要となる「強み×機会」を探し出すことにつながるのではないでしょうか。
限られた時間と人と資金で結果を出さなければならない経営者にとって、「だれに、なにを、どうやって」を点検しておくことは、日々の経営判断のスピードアップ、取り組む事業の優先順位付けにも役立ちます。言語化しておいた「価値」は販路拡大に用いるツール(ちらし、Webサイト、パンフレット)の主要な要素になるでしょう。新しい事業を考える際も、自社の価値の源泉を正確に把握していることは大きなプラスになります。
とはいえ、誰もが「自分(自社)の良いところを話してください」と言われても説明しにくいように、良いところを探すということは一人で考え込むだけでは気づきにくいものです。まして現在のような先が読めない環境においてはなおさらかと思います。こんな時こそ官民問わず支援機関と連携し、この難局を乗り越えていければと思いますし、私も微力ながらその一翼を担えればと考えています